本間昭光・森元浩二対談インタビュー<前編>
海外の音は日本では出せない?音楽制作の環境づくりの苦労
人気音楽プロデューサーの本間昭光氏と、アドパワーソニックの監修を担うレコーディングエンジニアの森元氏との対談トークをお届けします。アドパワーを使ってみての感想から、日本や海外の音の違いについて、また音楽制作の環境作りの苦労など多岐に渡ってざっくばらんに、本音で語っていただきました。
本間 昭光
音楽プロデューサー/作曲/編曲/キーボード・ピアノ奏者/株式会社イソラブル代表。
ポルノグラフィティ・いきものがかりなど数多くのアーティスト楽曲提供やアレンジ、プロデュースを手掛ける。テレビ朝日「関ジャム 完全燃SHOW」に出演するなど多方面で活躍。
森元 浩二
エイベックスエンターテイメントのチーフレコーディングエンジニアとして業界をリードする。日本レコーディングエンジニア協会副理事。
元来の車好きで車用アドパワーを購入。装着後の乗り心地の違いに驚き、「空気の流れが変わるのであれば音響にも効果があるかもしれない」という発想から、アドパワー社にコンタクトを取り、それがきっかけでアドパワーソニックの監修を担当する。
車に使うものを音に流用するっていう発想は、常日頃から音の事を考えているから
アドパワー中島(以下、中島)
今日はよろしくお願いします。まだまだ奥の深い音楽や音については勉強中の私ですが、お二人とお話しできるのを楽しみにしてました。アドパワーのことに限らず、色々な話が聞きたいです。
本間さん (以下、本間)
じゃあまずは、森元さんがなぜ音にこれを流用しようと思ったのか?何かきっかけがあったのかを聞きたいですね。
森元さん(以下、森元)
きっかけとしては、アルミテープを車に貼ると静電気が放電されて空気の流れが良くなるっていう話を見て。空気の流れといえばスピーカーだなと思って。スピーカーで一番空気の動きのあるバスレフポートにアルミテープを貼ってみたんです。しかし効果は感じなくて、スピーカーでは静電気抑制の効果はないかと思っていました。それから数年経ってアドパワーを知って、「お!これは」と思って車に貼ってみたらすごい効果があって。そうなるとまたスピーカーにも貼りたくなるわけですよね。で貼ってみると、今回は一聴して分かる効果で、これは凄いなと。
本間)
その発想がすごいですよね。そこで車のものを音に流用するっていうところが。常に音のことを考えてらっしゃるからこそですね。
森元)
仕事なんですけど…もう趣味なんでね。(笑)
本間)
(笑)まあでも、我々はちょっとでも良い環境で制作したいということを常に思ってるんですよね。365日24時間。どこかで食事しててBGMがいい音だなと思ったら、まずスピーカー見ちゃう。どういう配線になってるのかとか。色々何か常に気になっちゃう性なんですよね、制作者って。
周りに車が趣味の方も結構いるんですけど、パッと発想がスピーカーに行く辺りがさすがのエンジニアさんなんだなーって。僕だったらそっちの方に発想がいかなかったと思うんですよ。スピーカーとかヘッドホンとか良い物と言われてるもので、自分にマッチしているものを選ぶことはあるんですけど、スピーカー自体に何かを施すっていうのが全然発想になくて。エンジニアの森元さんがそれをやられたのが面白いなあと思ったんですよね。
中島)
なるほど〜、常に音楽のことを考えていらっしゃるからこそですね。
半信半疑でアドパワーを試したところ・・・
中島)
初めてアドパワーを森元さんから勧められた時どんな感じでしたか?
本間)
「え?テープって?」みたいな感じだったんですけど。これがもうびっくりするぐらいで、驚いちゃって。森元さんがうちのスタジオに貼りに来てくださって。貼る前と貼った後でこんなに変わるのかっていうぐらい変わっちゃったんですよね。
それはまあ明らかな違いだったので、即効で振り向いて「これ何なんですか?」みたいな感じ。ただ、その時は理論がまだわかってなくて。静電気っていうキーワードとバスレフに貼ると効果があるっていうことだけで。果たして静電気という言葉が正しいのかって感じだったんですけど。まあ僕らには理論なんてどっちでもいいんですよ。
森元)まあ、そうですね。
本間)いい音になって聴きやすくなるんだったら、そんなありがたいことないっていうね。
森元)他にも振動を抑えるとかそういうオーディオアクセサリーはあるんですけど、いい音になっているけど、それが本当なのか?って、実はショボい音が過剰に良くなってないか?と思うことが多くて。音楽制作のモニターは正確さが大切で、色付けは必要ないんですよ。でもいい音でなって欲しい(笑)でアドパワーを貼って得られる効果は、正確さを増すという方向で、仕事がやりやすくなりますね。
海外と日本との音の違いの原因は何?
森元)
海外行くと音がいいわけですよ。本間さんもたくさん海外に行かれてますよね、日本と全然違って音いいじゃないですか?
本間)
何であんなに変わるんだろう?
森元)
そう、何で違うんだろうっていう疑問が僕は20代からあって。僕の師匠がロサンゼルスで仕事してる人で、私も年に数ヶ月ロサンゼルスに行っていました。マイクや機材のセッティングは日本と同じでも、最初にフェーダー上げただけでものすごくいい音がしている訳ですよ。もちろん楽器の音がいいと言うのはあるのですが、日本で録音して持っていったトラックもいい音するわけです。よく日本は100V50Hzと一番電源環境が悪いと言われていて、それが原因と言わることが多いのですが、電気を使わないアコースティックな楽器でも、それも湿気を吸わない金属やプラスティックの楽器もいい音するので、電源だけじゃないって思っていて。で、アドパワーの効果を感じて、今は一つの理由が静電気なのかなと思ってます。
本間)
これ本当不思議なんですよ。昔から言われてるんですけど、海外の音になぜならないんだって。スタジオなんか電圧上げたり色々やってるんだけど、なぜかあの音にならないんですよ。日本から持って行ったシンセサイザーでさえ向こうに持って行くと良い音がしちゃうんですよね。でも帰って来たら、やっぱり同じ音なんですよね。
森元)
じゃあ向こうでは実際そういう音が録れたんですか?
本間)
録れてたんですよ。出音とか全部が変わっちゃってるんですよね。一番顕著なのは生ドラム。ドラムとか特に変わるんです。これまた西海岸と東海岸でも違う。西海岸は明るくて軽い。ニューヨークの方がちょっと重い。あれは何ですか?
森元)
僕は土地の違いと思ってます。(笑)
本間)
磁場の違い?(笑)変わるんですよ、音っていうのは実は、あちこちで。日本は日本の音、韓国は韓国の音。台湾も全然違うし、不思議なんですよ。海外の制作者たちに話をしても、特に何もしてないっていうんですよ。
日本では努力しないと良い音が出ない
森元)
このスタジオを作る時に、いい音にしたくて、ニューヨークにスタジオを見に行く事になって。「ヒットファクトリー」とか有名なスタジオがいっぱいあるんで見に行ったんですよ。ケーブルとか色々見るんですけど、向こうの人に自慢されるわけですよ。これはモガミのケーブルを使ってるんだとか、モガミって日本製なんですけど(笑)
一番大事なところに、普通日本だと太いケーブルを使うんですけど、そこに日本製のマルチケーブルっていう細いケーブルを使ってて。向こうでは努力しなくても良い音が出るんですよね。でも日本の場合は努力しないと出ない。だからここのスタジオも見えないところに実はすごいお金をかけてるんです。
本間)
ほんとそうなんですよね。ロスとか行って、アシスタントに「ソニーのテープレコーダー使ってんだぜ、うちは」とか言われて。「使ってるよ、こっちだって!」みたいな感じなんだけど(笑)でも録れる音、出てくる音が違うんですよ。
やっぱり北米の音楽が世界の基準ですから、そのサウンドに近づけたいなっていうのがあるし。僕らは実際向こうに行って音を聞いて、耳に記憶として残ってるんですよね、ずっと。なんであのドラムの音にならないんだろう。同じスピーカーを使っててもなんでこういう聞こえ方にならないんだろうって。
何度も行き来して、ライブを観て、レコーディングを見て。それで一つ感じたことは、低音の締まり具合が全然変わってくるって事。スピード感というか、音のスピードってあるんですが、そういうところの違いが一番大きいのかなって思うようになったんですよね。だからと言って、じゃあそういう低域をカットするのか、コンプするのかっていうことではないんですよ。ナチュラルで出てくるスピード感っていうのも違うんですよね。特にPAなんか全然違いますし。
中島)
PAってライブのスピーカーですよね?
本間)
ええ。ああいうでかいスピーカーでライブで聞いても全然違うんです。日本のレコーディングスタジオと向こうのスタジオも違いますし。特にアメリカね。長年のジレンマだったわけですよ。
で、今回このアドパワーのテープを貼ってもらったら、なんか急に低域のスピード感が上がって、締まったんですよ。締まるっていうのは、感覚的な話ですけど、もやっとしていたものがクリアになる。これは高域の話じゃなくて低い所の話で。低い音が今まで、ゆっくりもやっと出てきたものがスパッと出てくる感じになったんですよね。瞬間で。そこが一番驚きだったんです。とても聴きやすい音になった。
森元)
僕はアメリカの音に近づいたと思ってます。仮定ですが日本の空気は帯電しやすいのかなと思っています。空気は水の800分の1の粘度があって、静電気の量で粘度変化があるのかな?と。でも長年この仕事をやっていて、湿度で音が変わるとは思っていないんですよね。冬だからいい音録れたととか、梅雨だからだめだとか。単に静電気の発生しやすさじゃない、なにか別の要素があるんだと思っています。
本間)
確かに空気って全然違いますもんね。ハワイも、ロスも全然違うし、ニューヨークもロンドンも。不思議なもんですよ。湿度では表せない空気感っていうのがあると思うんですよね。それは地形であったりとか、海流であったりとか、いろんなことがあると思うんですけど。日本は島国で、なんかこう独特の空気感なんでしょうね。台湾もそうじゃないですか?島国だし。韓国は半島ではあるけど、周りを海に囲まれてる。いろんな要素が関係してくるんだろうなーって思って。
低域の音をしっかり判断できる環境を作ってくれるアドパワー
森元)楽器の事でよく話すんですけど、日本の低音打楽器って、サイズを大きくするんですよ。太鼓とかもすごく大きいじゃないですか。アフリカの低音打楽器って小さいんですよ。一斗缶ぐらいの大きさでもすごい低音が出る。日本ではそういう発想はないんですよね。たぶん大きくしないと低音が出ない国なんですよ。
本間)だからバスドラと言われている大きいドラムも、確かに聴感上はドーンって低い音が出てるんだけど、実際の低音ってそういうことじゃない。じゃあ5弦ベースとかで、いわゆる普通のベースっていうのは4弦で発達した楽器なんで、最低音のEより下は楽器としては無理させてるはずなんですよ。それでドーンって低い音が出てるなと思ってるんだけど、本当の低音って、実はもうちょっと上に存在するものだったりして。だからスーパーLOWとしても低音は結構無理してスピードが遅いものが出てきてしまっているので、これをアンサンブルさせようとすると難しかったりするんですよね。メタルの人達はすごいうまいなあと思って。楽器を駆使して、めちゃめちゃ低い音、7弦とか8弦ギターとかをものすごく使ってやってるんですけど、あれは本当にテクニックで低音の処理をカバーしてると思うんです。でもトラディショナルなポップスとしてはやっぱり4弦ですし、じゃあ最低弦のEを響かせると、かっこいいんだけど、スピードが遅くなってしまう。昔のストーンズもだけど、ものすごくロック・ロックしてて低音が響いてるものでも、ドラムはキックなんか22インチですよね。ちっちゃいし、ベースも別に低いとこ行ってないんです。ビートルズもそうですけど。だから本当の低音って何なんだろうっていうのはなかなか難しいんです。全部アンサンブルだと思うんです。楽器と楽器の合わせで出てくる定位っていう。マッチングなんですかね?なんでしょうね。
森元)これ、アドパワー関係ない音楽の話になっちゃうな。(笑)
中島)大丈夫です!すごく興味あります。(笑)
本間)そういう低音を判断するにおいて、このアドパワーを貼ることによって、整流効果というか、低域の僕らが求めてるリアルな低音というものが出てくるような。
森元)分かりやすいっていうか、判断しやすいっていう。ドラム※に貼っても低音は変わります。
本間)ドラムも変わりますか?
森元)変わりますよ。貼った瞬間に、「おっ」ていう感じになります。ドラムヘッドはプラスティックなので、帯電しやすいんでしょうね。ドラムをチューニングするプロのテックの人たちは、これまで得られなかったキレのいい音に喜んでいます。プレーヤーの人は演奏方法で音色の色合いを付けるのですが、その幅が広がります。
本間)そうなんですよね。それも含めて自分のテクニックとして、演奏者として身に着けていることの方が多いので。ただ、僕らはそれを録音されたものをどうまとめるか。既に録音されているソフト音源をチョイスする時に、低域がしっかり判断できる、その環境をアドパワーが作ってくれるのはありがたいです。
森元)ちなみに本間さんがスピーカーにアドパワー貼って、その変化に気付いて驚くの超速かったですよ。多分、今までで最速です!音が出て1秒2秒ぐらいで笑ってこっち見ましたからね (笑)。
本間)やっぱ変わるんだな~。
森元)こういう感じの物って一瞬すごくいいって思って使うんだけど、使っているうちに「やっぱ騙されている?」とか「実は良くない変化?」などと思い始めて使わなくなる物が多いんですけど、アドパワーはそれが無いですね。逆にそれが普通になっちゃって、貼っているのも忘れてしまうと言う人が多いですね。
本間)うん、もう普通になっちゃってる。
※ドラム用アドパワーは現在プロ向けに受注制作しており、一般販売はいたしておりません。
環境を変えたらそれに慣れなきゃいけないと諦めていた
本間)自分の環境で、ジェネレックっていうスピーカーをずっと使ってるんですけれど、サイズによって音が変わるんですよね。当然のことながら。新しいモデルを使ってみたところ、低域の感じっていうのが今まで使ってたものとはちょっと違って。これ、慣れなきゃいけないだろうと思って。慣れって必要なんですよ。慣れるべきものなのかなと思って諦めていたんですよ。
森元)単に慣れの問題で、慣れればそれが普通になるというパターンも多いですからね。
本間)まあ、そういうもんですよ。新しい車に乗ったら、それまでのハンドルの感じ、ブレーキの感じと違うけど、ちょっと慣れなきゃいけないっていうのと同じことで。良くないっていうことではないんですよ。単純に新しいものに慣れなきゃいけないって思っていたんですけど、アドパワーを貼ることで、それが一瞬で解消されたんですよ。なんか魔法みたいでした。
森元)本間さんのジェネレックだと、小型でバスレフポートの音の重要性が高いので、ポートを通ってきたちょっと遅れる低域が気になるんですよ。簡単に言えば低域がモワっとしている。それがアドパワーを貼ることによって、低域の音の速さが増すので気にならなくなるんだと思います。そして低域でマスキングされていた高域も聴こえやすくなって、全体に高解像度になりますね。
中島)
購入いただいた方のSNS投稿で、音が好きじゃなくて売ってしまおうと思ってたスピーカーに、試しにアドパワーソニックを貼ってみたら、すごく音が良くなってスピーカーを売らなくてよかった、と言うお声があがっていたんですけど、やっぱりそれほど違うものですか?
森元)
それほど違いますね。
本間)
人によって色んな聴き方があると思うんですけど、整流効果によって抑えられるところが、ちょうど自分の気になるポイントと合致したんですよ。だから自分にとってはすごく良かったなと。だって貼るだけですよ!
森元)
「だって、貼るだけですよ。」本当ですよ。
本間)
貼るだけで本当に変わっちゃうんだもんね。全然いいですよ。
中島)
それをほかの機材とかに変えようと思うと、ものすごいお金とか労力がかかりますよね?
森元)
まあそうですね。あの変化はね、他の機材じゃ得られない。ケーブル替えようが電源替えようが、アドパワーのような効果は得られないです。
本間)
接続するケーブルも電源ケーブルも、いわゆるいいものを使ってたんですね。それでもダメだったから、これに慣れなきゃって思うじゃないですか。同じ電源ケーブル、ラインケーブルを使ってもちょっと聴き具合が違う。新しいスピーカーにしたから、どうしても慣れなきゃと思ってた。その慣れなきゃってものがアドパワーを貼ったら、なくなった。すっきりした。そこからは違和感なく。
森元)
あとは気にならなくなる。気にしなくなっちゃう。貼ってるの忘れちゃいます。
本間)
そう、忘れちゃうんですよ、貼ってるの。だから、自然なんですね。気にならない。
森元)
そうですね。だからもし貼ってて気になるものだったら、聴いてるうちに剥がしたくなるんですよ。気にならないから、貼ってあることも忘れちゃう。これまで、物差しの目もりがぼやけて見えてなかったのが、ちょっとはっきり見えるようになるっていう感じ。
〜音が国によって聞こえ方が違うこと、そして日本の音をアメリカの様な低域の締まったスピード感のある音に近づけるべく、お二人をはじめ音楽制作の現場の方々は日々ご苦労されている事がよく分かりました。制作現場の環境や機材はそう簡単に変えられるものではありませんが、アドパワーソニックの効果がその一助になっている事を知り、アドパワースタッフ一同とても嬉しく思いました。さて、お二人の話はこの後更に深くなり、まだまだ続いていきます。本間さんの考える人に感動を与える音とは?続きは後編でお楽しみください!〜
インタビュー後編はこちらから